世界的なコストプッシュインフレとスタグフレーションの恐れ
世界的なコストプッシュインフレとスタグフレーションの恐れ、という事についてお話させて頂きたいと思います。
世界的に現在、コロナからの回復が進んでいます。
その背後で、何が起きているのでしょうか。
そして、アメリカでは11月にもテーパリング、いわゆる量的緩和の縮小を開始し、来年には利上げに向けて動き出すとしています。
これには大きな原因がありました。
実はコロナによって、世界中の物流、そして世界中の需要は一変しました。
みんなが家に引きこもる形になり、物の流通、物の利用量が一気に減少したわけです。
これにより、石油価格や様々な物価が落ちて行った、低下して行ったという事になります。
しかし、徐々に回復して行く過程で、その歪みが非常に大きなものになりました。
約1年半に渡り、世界中の物の流れは、大きく変化しました。
コロナ前、そして1年半の間の物が動かない状態。
そして、回復期に入った現在。
この間で、世界の環境が一変してしまったわけです。
現在主要な資源価格。
例えば石油。
例えばアルミ。
そして、天然ガス。
このような主要な資源価格が約2倍近くまで上がってしまっています。
生活の基礎物資が2倍近くに跳ね上がってしまっているわけです。
更に、大混乱を大きくするものは、世界的な船不足とコンテナ不足です。
実はコロナ禍、船の運賃は一気に低下しましたが、これが現在、なんと最安値の10倍近くまで上がっている。
通常の状況に比べ、約5倍近くまで上がってしまっているわけです。
つまり、どこかの国で物を作ったとしても、その輸送に膨大なコストが掛かってしまう構造になっています。
更にこの物流混乱に拍車をかけたのは、極めて強引なカーボンニュートラル。
そして、グリーン投資でした。
コロナ禍で石油の需要、エネルギーの需要が低下している中で、カーボンニュートラルの議論が進みました。
そして、トランプ政権からバイデン政権に代わり、グリーン中心のエネルギー革命などというものが世界中でうたわれたわけです。
そして、石油や石炭など、化石燃料への投資を停止する動きが進みました。
また、中国も同様で、石炭などの鉱山の廃山。
そして、石炭火力発電所などの停止。
そして、投資の停止、というものが起きたわけです。
しかし、経済が回復する。
そして、悪天候により石炭の供給が減少した事によって、中国は現在、大停電に見舞われています。
これにより、世界中の物の量が減少するという事も起きています。
例えば、電力を大量に使うアルミですが、世界の供給の約半分が中国で精錬されています。
中国での停電は、アルミの総量を減少させる事になってしまうわけです。
更に、半導体不足や、そして6、7月のASEANでのデルタ株の蔓延。
そして、ロックダウン。
このような複数の要素によって、世界中の物の生産量が減っている。
そして、物流コストも上がっている。
このような状況の中で、世界の経済は一気に元に戻ろうとしているわけです。
日本でも人の流れ、そして物の流れが現在、正常化されつつあります。
コロナの感染者も減る中で、みんなが普通の生活を取り戻そうとしている。
つまり、需要が一気に上昇してしまった。
9月のアメリカの消費者物価指数は5%以上の上昇となっており、既にアメリカでは5%以上のインフレが発生しています。
当然、日本でもこのようなインフレの動き、連動して起きる事になるわけです。
日本の場合、スポットと呼ばれるその場で買う物よりも、契約調達が多いが故に、その価格の反映には時間差がありますが、もう既にガソリンの値段は、6週連続で上昇しており、2014年以降の高値をつけているという状況になっています。
景気が悪い中で、いわゆる原価、物の値段が上がるコストプッシュインフレが起きる。
このような状況をスタグフレーションと呼びます。
つまり、悪性のインフレと景気の回復の遅さ、この2つが同時に世界を襲う事になっているわけです。
更に、このインフレの理由には、世界各国が量的緩和によって、通貨を増刷したという事にも影響を受けます。
世界の通貨量が増える中で、物の量が減少すれば、必然的にインフレが起きてしまう。
このような状況であるが故に、アメリカは11月、12月のテーパリング。
量的緩和の縮小の開始を発表したわけです。
アメリカのドルの量全体が減る事によって、逆に日本の円は円安に進みます。
円安に加え、資源高と通貨安というダブルパンチを食らってしまう構造になっているのが、現在の日本と言えるでしょう。
このような状況の中で、日本も量的緩和に関して、限界が出てきてしまう。
アメリカの通貨に合わせて、金利に合わせた動きをしない限り、日本の円安が進む。
円安は物価高を招く。
コストプッシュインフレを招く。
という負の連鎖に入りかねない状況になっており、日本もなかなか金融政策を取りづらい状況になったと言えると思います。
ただし現在、アメリカでは来年度の大規模な予算編成と、来年半ばまでのテーパリングの継続を発表しており、日本に関しても、今回の解散総選挙後の補正の組み換え。
そして、来年度予算。
そして、来年度の補正予算あたりまでは、比較的自由な金融政策が取れます。
この間に、徹底した予算処置を取る事が必要とされるでしょう。