明確な証拠を示さなかったユニクロ
これに対してユニクロは抗議をしたものの、現実問題として関わっていないという明確な証拠を示さなかった。
そして、この事実を株主等に対して隠蔽していた、複数の問題が生じているわけです。
更に言えば、今回の制裁対象、輸入禁止の対象はグローバル・マグニツキー法に絡むものであり、これはヨーロッパなども賛同する可能性があります。
直接的に輸入差し止めになったのは、一部の綿シャツだけではありますが、ユニクロという企業の製品全体が、世界各国から輸入禁止にされる可能性すらあるわけです。
綿花やトマトの輸入が優先的に問題視されている理由
また、今回問題となっている綿花、そしてトマト。
なぜ、これが優先的に問題視されているかと言えば、一種のプランテーション農業であるからです。
トマトや綿花、これは収穫時期だけ出稼ぎ労働者のような低賃金労働者を導入し、手摘みで摘ませます。
このような作業は、一種の奴隷労働的な側面を持っており、これが最も大きな人権侵害としているわけです。
この為、ウイグルの他の製品、例えば工場で作られる組み立て製品などよりも、厳しい対応となっていると言えます。
そして、この綿花ですが、アメリカの戦略的輸出品目でもあります。
アメリカは、綿花の輸出国であり、ウイグル制裁に絡む綿花の輸入禁止等によって、実はアメリカの綿花輸出40%以上増という急激な増大が見込まれているわけです。
米国当局に喧嘩を売ったユニクロ
このような状況の中で、ユニクロはアメリカ当局に喧嘩を売った事になります。
また、アメリカとすれば、アメリカ企業を制裁するよりも、外国企業、そしてシンボリックなグローバル企業、有名な企業、ここに対して制裁を課すことで、スケープゴート化し、他の企業に警告を与えるいい理由にもなるわけです。
ユニクロという会社は、ご存じのように日本企業です。
アメリカ経済にとって、それほど大きなダメージにはなりません。
また、ヨーロッパなどにおいても、他のファストファッション、安売りの服業者とのライバル企業であり、逆にユニクロが無くなれば、域内企業が儲かる仕組みでもあるわけです。
その意味では、ユニクロはかなり厳しい状況に置かれていると言えるでしょう。
今後、どのような対応を行うか、これはアメリカ側、ユニクロ側共に分かりませんが、ユニクロにとって、大きな経営上のリスクを抱えた事は間違いありません。
中国と関わる日本企業に対する警告
また、この事実を公表しなかった事が、金融商品取引法等の他の法令に関わってくる可能性もあり、東証などの上場維持に影響を与える事も考えられます。
現在、世界の年金や基金など、公的な資金は、人権侵害等に関わるような企業に対して、投資をしたり融資をする事を禁止する方向に進んでいます。
これはグローバルな金融機関、大手の銀行なども同様です。
今回、アメリカの金融制裁の対象となっているウイグルの企業と関わっていたという事が、明確になれば、銀行から融資の差し止め。
また、年金ファンドから、全て株式の売却をされる可能性すらあるわけです。
そしてこれは、経営陣の個人的な問題にも直結します。
リスク管理が出来ていなかった。
正しく株主に情報を開示しなかった。
これは、株主代表訴訟の対象となり得る状況であり、株主代表訴訟を起こされ、敗北した場合、オーナーの柳井氏をはじめとし、経営陣の個人資産の差し押さえや、個人資産での損失補填を求められる可能性すらあります。
今回のユニクロの問題は、様々な中国と関わる日本企業に対する警告とも言えるでしょう。