中国独自の金融ルール
それに対して、中国の法律は、独自の法律で、グローバルスタンダードではありません。
ご存知のように、中国は為替すら自由化出来ていない。
資本移動の自由がない。
国際法に乗っ取った金融ルールがない。
独自の共産主義、中国独自のルールを制定しています。
ですから、中国のルールで、他国の企業や、他国の銀行が運用した場合、非常に不利な条件で戦わなくてはならない。
それに対して、香港はイギリスの法律によって担保されているから、国際金融センターとしての役割が非常に大きいわけです。
中国に欠かせない香港の役割
例えば、香港ドルという通貨があります。
この、香港ドルと中国の人民元。
これは、通貨としても別の通貨です。
香港ドルの場合、ドル預託通貨という形で、民間の銀行HSBCやスタンダード・チャータード、中国銀行という銀行が、銀行の持つアメリカ国債を担保に発行するドル預託通貨という通貨。
つまり、香港ドルの裏付けというのは、アメリカの国債、アメリカドルなんですね。
それに対して中国人民元には、裏付けがありません。
あくまでも、中国人民元は、中国の持つ資産を担保。
中国政府の持つ資産を担保に発行するだけのもので、裏付けになる資産というのがない。
それに対して、香港ドルは、ドルと同じ役割を持っている。
このために、世界各国から、物を輸入する場合、中国は香港ドルで海外から物を買い、そしてそれて物を作って輸出するという構造だったわけです。
かつて、貿易統計においても、香港と中国本土、別統計でした。
日本から企業が物を輸出する場合、まず税率のかからないフリーポートであった香港に物を入れ、香港から本土に物を流す。
そして、決済は香港ドルで貰う。
香港ドルは、ドルが裏付けになっているので、ドルと同じ役割をしていた。
これが香港ドルの役割であり、香港の金融センターであり、中国の世界の窓口の役割をしていたと言えるわけです。
もし中国が、この香港の金融センサーを、一国二制度を壊し、中国の統治の下に置いたら、当然、世界の金融機関の多くは、香港を捨てて行くでしょう。
なぜならば、中国の法律に基づいて債権を発行する。
中国の法律に基づいて契約をする。
それが守られない可能性が高くなるわけです。
金融において、信用の出来ない相手にお金は貸せません。
また、このルールが、一方的に変えられてしまうような国では、安心して取引が出来ないわけです。
これを担保しているのが、香港にあるイギリス法で、これは一国二制度という大きな枠組みの中でしか成立しないからなんです。
現在、香港において、世界中のIPO、いわゆるドル建ての資金調達などの約1/3近くが行われています。
中国企業も、海外から物を買う。
海外に進出する場合、外貨が必要になります。
この外貨の調達を出来るのが、香港市場だったわけです。
壊れそうになっている香港市場
この香港市場が、現在壊れそうになっています。
米国政府は、もう中国政府系企業によるIPO、資金調達をアメリカ国内で認めていません。
このため、アリババを中心とする中国企業は、香港に活路を求めていました。
しかし香港も、中国の支配下に落ちる可能性が高くなった事によって、この香港での外貨の資金調達が、難しくなり、アリババも起債を諦めている状況に陥っています。
これがどうなるかは、中国政府次第ですが、中国が香港を失った場合、金融面での大きなダメージを受ける事は間違いありません。