メディアが報じない米露関係の真実
前回は、トランプ大統領のNATO、対NATO観と言いますか、それを中心にお話ししました。
しかしこれは別に必ずしも、皆さんお気づきの通り、軍事的な側面と言いますかね、日本でも軍事専門家はたくさんいますけれども、NATOの軍事力がどうだとかそういう話もさることながら、そもそもそのNATOの持つ危険性というものに対して、トランプがどう考えているかということをお話し申し上げたわけです。
それに対して、アメリカのメディア、ヨーロッパのメディア、世界のメディアはみんな、トランプは非常にけしからんという趣旨を言ってるわけですね。
それはロシアという敵に塩を送るような行為だと、NATOを内部から撹乱するようなこの言動はね、ということを言っているわけですが、実は、そういう発想自体が東西冷戦の発想なんですね。
東西冷戦時代の、つまりソ連と、米ソの冷戦時代の発想なんです。
実はそこから抜けきってないんですね。
それは依然としてプーチン大統領がソ連と同じように、ロシアが世界の覇権を目指している、それでプーチンは周辺諸国を、なんて言いますかね、ロシアの影響力を拡大しようとしていると。
あるいはクリミア半島の併合に見られたように、領土の拡張を目指していると、そういう姿勢が一貫してうかがえるわけですね。
ところが問題は、我々がその、プーチン大統領がなぜ今、メディア、主としてメディアでですが、それ以外のいわゆる知識人といってもいいですし、多くの政治家、政治の世界と言ってもいいんですが、なぜプーチン大統領が悪者になってるのかということなんですね。
実はこれは日本のメディアもそうなんですが、もうプーチンがそういう、今申し上げたような世界の撹乱要因だと、あるいは国際秩序を、今の国際秩序の挑戦者だという論調で一致しているわけですね。
しかしそれは必ずしもそうでないということを、私は今回はそのお話を中心に申し上げたいと思うんですね。
なぜプーチン大統領が今世界の悪者になっているのかと、その原因といいますか、その源は、実はウクライナ危機にあるわけなんですね。
ウクライナ危機っていうのは、もう今やメディアを賑わすことが少なくなりましたので、覚えている方も少ないんでしょうけども、2013年の晩秋ですね、から起こっているわけです。
それは当時の、ヤヌコヴィッチという、親露派と言われておりましたが、その大統領の、反ヤヌコヴィッチ運動であったわけですが、直接的な契機になったのがEUとの連合協定と言ってましたけどね、EUとのそういう協定をめぐる動き、戦いって言いますか、動きだったわけですね。
その時に、ヤヌコヴィチ大統領もEUのそういう連合協定、関係を強化する協定に調印する用意をしてたんですが、しかしEU側が、いろいろ調べてみますとそのハードルを少しずつ少しずつ上げてきたっていうことですね。
それですから、調印にあたっては例えばヤヌコヴィッチ大統領の政敵であったティモシェンコ元首相、そのときは収監されてたわけですね、そのティモシェンコを釈放しろということがその条件に入ってたわけですね。
これはまあ、ヤヌコヴィッチ側からすれば、一応政敵であるとはいえ、いろんな事情でちゃんと裁判を受けて収監されたと、そういうティモシェンコを釈放するということは、いわばウクライナの法律を曲げることになるわけですね。
しかもEUによる内政干渉だということに、あからさまな内政干渉なんですが、それはどうしても呑めない条件だったわけですね。
そうこうしているうちにロシアの方が、EUが連合協定を結んだあとに予定されていた経済支援もロシアが肩代わりしようと、こういったと言われてるんですが、そういうことでヤヌコヴィッチもいろんなEUの条件ですね、それにまあ嫌気がさしたといいますか、それでEUとの連合協定の署名を中止したということが、まあ契機になったと言われてるんですね。
で、そこからデモが始まるわけなんですが、実はこのウクライナにおける反政府デモっていうものは、私が2008年まで3年間、日本のウクライナ大使をやっておりましたけれども、その時に経験したいろんなウクライナの政治状況と比べて、明らかに異なる点があったんですね。
それはどういうことかというと、非常に暴力的なデモであったということなんです。
暴力的なデモであったという一つの原因はですね、当時かなり力を、2014年、13年から14年にかけてかなり力を得てきた、右派勢力っていうのがあるんですね。
この右派過激派勢力が、いわゆる民主化と称するデモ、反ヤヌコヴィッチ大統領デモに参加してきたということですね。
それで、デモが相当暴力化したという事情がありました。
実はそれだけではなくて、決定的にこのウクライナ危機を特徴付けたのは、実はアメリカのネオコン勢力が絡んでいたということですね。
このことはもちろん日本の、アメリカのメディアも日本のメディアもヨーロッパのメディアも正面から取り上げないんですが、その傍証と言いますか、実際に起こったことを丹念に組み立てていきますと、明らかにアメリカのネオコン勢力、ネオコンっていうのは新保守主義者と言われていますが、このネオコン勢力ですね。
ブッシュジュニアの時代のアメリカ外交を担っていた勢力ですが、そういう人たちは基本的にはオバマ大統領の時にもアメリカ外交の背後にあったんですが、そのオバマ大統領のは晩年、晩年じゃないですね、その最終、14年ですからまだオバマ大統領の時ですけど、その時にネオコンが、今申し上げたようなウクライナの反政府デモを主導してたということですね。
このことを我々はまず理解しなければならないんです。
それは、実は証拠はあがっているわけですね。