なぜ辛い記憶は忘れられないのか?
人間というのは、過去の辛い記憶に苦しめられる生き物です。
人間の脳というのは、基本的には都合の悪い記憶は忘れるという性質があります。
一方で、強い感情と結びついた記憶は、消えにくいという性質もあります。
忘れられない性質を活かす偉大な人物
大きな成果を挙げる研究者は、いい意味で粘着質なタイプが多く、同じ研究を長年続け、その結果、ノーベル賞を受賞するといったケースもあります。
忘れにくいという性質を活かし、成果を挙げる人もいるという現実もあります。
失恋の辛い気持ちを忘れる方法
失恋などの辛い気持ちを忘れられないという事は、とても苦しい事ですよね。
そんな辛い気持ちを忘れる方法として、その辛い気持ちを何度も思い出して、その事を言葉にするという方法があります。
シロクマ実験の驚きの結果
米国で行われた実験で、興味深い事例があります。
シロクマ実験という通称で知られた実験です。
シロクマというのは、心理学的な意味があまり無いニュートラルな動物です。
そんなシロクマの一日を記録した約50分のビデオを被験者に見て貰います。
見て貰った被験者を3グループに分け、
1グループ目には
「シロクマの事を覚えておいてください」
と指示し、
2グループ目には
「シロクマの事は考えても考えなくてもいい」
と支持し、
3グループ目には
「シロクマの事だけは考えるな」
と支持をします。
そして、一年後その被験者たちに再度集まって貰い、ビデオの内容をどのくらい覚えているかをテストしたところ…
3グループ目の
「シロクマの事だけは考えるな」
と支持されたグループが、最も内容を覚えているという事が分かったのです。
失恋相手を忘れられない理由
つまり、恋愛で考えると、失恋相手の事を忘れよう、忘れようと思えば思うほど、忘れられなくなってしまうのです。
思い出さないようにしようと、自分に言い聞かせなければならないほど、その事に注意が向いてしまっているという事を示します。
つまり、考えないようにしようと思えば思うほど、逆に忘れられなくなってしまうのです。
記憶はどのように出来ているのか?
人間の記憶は、記憶格納庫があって、何かを思い出すたびに、その格納庫から記憶を取り出すという作業を行います。
格納庫から記憶を取り出し、また格納庫に記憶をしまうという作業が繰り返されるのです。
その作業が繰り返されるたびに、記憶には違うタグが、タグ付けされると考えてください。
最初に思い出したときは、
「辛くて悲しくて、彼はどうしてあんな酷い事をしたんだろう…」
と思うかもしれませんが、だんだん思い出す事を繰り返す度に、
「冷静に考えると、彼はこういう人だった」
「自分はこういう人を好きになる傾向があるな」
という思いに至るかもしれませんし、
「自分にとって必要な経験だった」
という気持ちが、記憶にタグ付けされていくかもしれません。
記憶に対する意味合いを変える
つまり、記憶そのものは変わりませんが、記憶に対する意味合いを変えていくことが出来るのです。
その意味を変えるという作業を頻繁に行う事が
「忘れやすい」
状態であるという事になります。
強烈な感情が、次第に収まっていくため、それと結びついた記憶も薄れて、しまっておきやすくなるというわけです。
辛い思いで程、何度も思い出して、その中に価値を見出す事が必要ですね。