裁判員裁判の流れ
公判前整理手続で、ある程度大きな流れが見えて、そのうえで裁判員の方が決まりますよね。
今回は、注目の裁判員裁判ですから、一般の方が考えるわけです。
今回の事件はどういう事なんだ。
この出来事は何なんだと。
一体、どういった罪なんだと。
そういった事を含めてこういった流れらしいのですが、まず裁判員が6人います。
裁判長が1人、裁判官が2人、合計3人いらっしゃるという事。
事実認定というのを、まずこの9人全員で行われるそうです。
6月5日、夜9時30分過ぎに、東名高速の下り車線、追い越し車線に止められましたというような事が、全員で話されるそうです。
でその後に、高山先生がいま仰っていた、法律の解釈と適用。
要するに、危険運転致死傷なのか、監禁致死傷なのかに関しては、ここは裁判官のみで行うそうなんです。
ですからここに、裁判員の方6人は入らない。
いや、少し違うんじゃないかと思うんですけど、少なくとも裁判員の人も、危険運転致死傷罪で有罪かどうかという所は入りますよ。
それを僕が説明したのはその後ろです。
ですから、事実認定の所で、まず裁判員が加わる。
今回のケースが、危険運転致死傷なのか、あるいは監禁致死傷なのかというのは、職業裁判官が決める。
少なくとも、起訴事実が認められるかどうか、つまり最初の事実認定という所のどのくらいの幅なのかによるんでしょうけども、起訴された事実。
つまり、危険運転致死傷罪の事実は、認められるかどうかというのは、裁判員も当然入ります。
それは、事実認定なんで当然ですね。
はい。
罪名が決まるかどうかというのは、裁判官の3人の方が決めるんですよね。
裁判官が決められるというふうに、裁判員法が規定しています。
という事は、危険運転致死傷なのか監禁致死傷なのかを決めたのは、9人全員ではなくて、裁判官と裁判長、合わせて3人という事なんですね。
いや、そんなことない。
公判が始まる前の段階で、そういう事が言われているんです。
公判前整理手続の中で、「これは危険運転致死傷罪だと危ないですよ」と、「どうしますか?」と。
「監禁致死傷罪という事を予備的訴因で加えておかなければまずいんじゃないですか?」と。
裁判員が参加する前の段階です。
今年の8月頃と言われていますね。
そこでも、そういった議論が行われていたという事なんです。
少なくともですね、今回の裁判員が加わった、いわゆる評議と言うんですけど、議論ですけど、
その中では、「この危険運転致死傷罪は有罪だと思いますか?無罪だと思いますか?」という事で、裁判員がそこには加わります。
それはもちろん加わります。
更に、量刑にも加わるんですけど、
量刑にも加わる。
ですから、危険運転かどうかを決めるのは、裁判官だけが決めるという言い方は正確ではない。
生の事実を認定する時は加わりますけど、法的評価は裁判官が行うと。
裁判員と陪審員の違い
法律家のみなさんって、なかなか難しい事を言うわけで、新聞記事風に分かりやすく言うとですね、要するに、日本の裁判員裁判というのは、アメリカの陪審員とは違って、有罪無罪の判断と量刑の判断と、両方をやって頂きますという所なんですね。
陪審員は、有罪無罪の判断だけ。
量刑は、裁判官が決めますと。
そこが大きな違いなわけです。
で、この場合、裁判官が、危険運転致死傷罪で行きますと、この法律を適用しますと。
言った時に裁判員が、「これはダメだよ」と言った場合には、その法律しかなかったら、無罪になっちゃうわけですよ。
他の物を持ってきて、急に適用するっていうわけにはいかないわけですよ。
ですから、罪名は裁判官が決めますよというのは、例えば罪名は裁判官3人で危険運転致死傷にしましょうねと。
それで、有罪ですかどうですかというのは裁判員裁判の9人みんなに聞くと。
「これだったら無罪ですよ」と言われちゃったら、適用例が無くなっちゃうから、監禁致死傷を付けたわけですよ。
でも、今回は「やっぱりこれで行きますね」という形になった。
それは、どのくらいの比率だったかは分かりませんけれども、これを適用しますと。
じゃあ次に量刑は、裁判員のみなさんと、裁判官で評議ですけど、結果を決めましょうと。
言って、18年になったわけです。
だから、法令適用に関して、全く裁判員が参加していないという事は無いわけで。
ですから、罪名を裁判官のみで決めるといっても、罪名を決めるのは裁判官なんだけれども、それを有罪か無罪かを決めるのは裁判官、裁判員みんなで決めると。
有罪か無罪かを決めるかも、きちんと裁判員の方が加わって決める事です。
ただ有罪と言っても、何の罪で有罪なのかというのは当然ついてまわるので、こういう罪で有罪ですか?無罪ですか?という事については、裁判員の方も当然加わって決めると。
こういう罪と決めるのは、裁判官という事ですよね。
こういう罪というのは、検事の方が、検察官の方が、起訴状で、危険運転致死傷罪で起訴しましたよ、という事ですから。
起訴した内容で、その罪で有罪か、無罪か、という事を判断していくと。
裁判員裁判と民意の反映
今回はですから、裁判員裁判ですから、ある種、民意が反映されたようなそういう結果になるんじゃないかなというような事は言われていたと思うんですけど。
そうですね、私は、横浜地検は、裁判員制度だという事になるとこれは、本当に悪辣、悪どい事件だから、それは土俵を広げても許されるという風に認定すべきだという風に、裁判員のみなさんが言ってくれるのではないかという期待を持ったと思います。
実際、そういう期待にある意味、応えたのではないかと思いますね、裁判員のみなさんは。
それで、土俵を広げるという言葉がいいかどうかはともかく、解釈の仕方を変えるかどうかはともかく、やっぱり一種無理のある危険運転致死傷罪の適用を、いいという事に多数決でした。
そういう欠陥が残った。
それは私は問題だと思うけれども、社会と意識とでも言うのでしょうか、それが反映したという事は、その通りではないでしょうか。
横浜地方検察庁は、元々、危険運転致死傷罪が成立するという事については、かなりの自信を持っていました。
それはですね、要するに、先ほどの「よって」と申し上げましたけれども、その解釈やなんか、最近の最高裁判所の考え方なんかを踏まえて考えると、今回の場合も、たぶん危険運転致死傷罪で行けるという事を、かなりの自信を持っていたと思います。
若狭さん、3~4割って書いてありますよ?
いや、私は3~4割。
横浜地検は自信を持っていたのではないかと。
横浜地検はおそらく、これはですね、法務省の法令解釈の部署に問い合わせをしているんです。
法務省全体が、これだったら大丈夫ですよという事で、お墨付きを与えているんです。
その上で起訴していますから、横浜地検としては、相当の自信を持っていたと思います。
それから行くと、地裁はですね、一歩後退させたんです。
大事な停止の行為に関して言うと、これまで認めちゃったら、高山先生が仰るように土俵が広がっちゃうじゃないかと。
これは切り離そうじゃないかと。
だけど、待ってくださいと。
高速道路に散歩に行くヤツはいないわけですよ。
元々そこは、車を走行させる所だと。
ましてや、追い越し車線であると。
これが、一般市民の考え方であって、だから0キロメートルで運転中だよねと。
そこに、例えば100歩譲ってですね、パーキングエリアだったり、バスの停留所だったら、それは違う目的で止まっている事もあるでしょうと。
高速道路の追い越し車線に、運転以外の目的で、止まる車があるのかと。
いう事からすれば、なんで今回、横浜地裁はそこまでは認められないよという形でですね、中途半端に妥協してしまったのかと。
これはダメだよと。
第三車線に人を下ろして、しかも胸ぐらと掴んで、そこに誰かが突っ込んできたと。
これはあおり運転ですと、なぜそこまで限定的にきちんと言わなかったのか。
むしろそれは遺族からすれば、残念でならないと思いますよ。
萩山さんの長女の想い
先月、この法律の壁について萩山さんの長女の方は、このように仰っていました。
危険な運転が肯定されてしまう世の中になってしまうかもしれないから、それはダメなんじゃないかと思います。
今後もきっと、こういうこと(あおり運転による事故)が起こると思うんですけど、楽に物事が進められるように、法律がちょっとでも変わったらな、と話していました。
危険運転致死傷罪という犯罪がね、生まれたいきさつがあるんですね。
18年くらい前になりますか。
走行中に起こした事件でとんでもない事がある、これをなんとかしようという事で始まった。
だけど、今回のようなこういう状況というのは、本当に想定していなかったの。
だから、国会の議論の中でもそういう事は出ていない。
しかもこれを拡張して解釈すると危険な事もあるから、あいまいな規定もたくさん入ってる条項なので、拡大解釈してはいけないよというような事が、衆議院、参議院の附帯決議も出ているんですね。
そういうつまり、気を付けなければいけない法律なんですよ。
そういう事があった。
そこを一歩踏み出したというのは、私は検察が自信を持っていたというけれども、若狭さんも3~4割くらいしかそれを見ていないという事はですよ、ここに問題があるという事は、みんな感じているわけですよ。
実際に、車が止まっているというのはね、0キロメートルで走行している事だなんて言葉まで出たのは、ちょっとこれはもう理屈がね、無理だな、詭弁を言っちゃあいけないよとう感じを、私は持ちましたよね。
高山先生の仰っている事は、私もよく理解できるんです。
で、結果が不都合な場合に、じゃあどうすればいいかというと、2つの方法がありまして、
1つは法律を変えると。
もう一つは解釈で、そこをカバーすると。
この2つの方法があって、今回はおそらく横浜地裁は、解釈でカバーしようという事をしたんだと思うんですけど、
ただ、弁護士をはじめとして、やっぱり罪刑法定主義の立場に立つと、ちょっと解釈が行き過ぎているんじゃないかなというような懸念があるとすれば、法律を変えていくというのが、正攻法だと思います。
この先の事ですかね、それは。
確かにね、公安事件なんかでですね、法律の拡大解釈で我々の社会は、大変な目にあった時があるわけです。
こんな解釈は無いだろうと。
よく言われるのは、転び公妨と言われるような事もあった。
だけど、それがあるからと言ってですね、なんでもかんでも法律の枠内でやるという事になれば、法律があらゆる事を想定しているわけではないわけですよ。
今回のように胸ぐらを掴んで、まさかそこにトラックが突っ込んでくるとは思わなかったと。
それをすべて法律でカバーしていこうと思ったら、このケースはどうなの、あのケースはどうなのと、でも起きたことに関して、だったら解釈で、これは無理ないよねと、使おうよと。
そのために、裁判員裁判というのを導入したんじゃなかったのかと。
今回、それが活かされなかったと。
1999年に、東名でね事故があって、2人のお子さんが亡くなった時に、あの時に道路交通法で裁けるのは最高で4年だったわけですよね。
2人の命が亡くなっているのに、過失ですか?という事で、相当に酔ったトラックが突っ込んだという事があってから、2001年にこの危険運転というものがね、成立するんでしょうけど。
やっぱり、そういった出来事で、解釈なり、法律が変わっていくとう事は確かなんでしょうから。
今回の事を世の中がどう受け止めたのかなという事だと思うのですが、やっぱりこのあおり運転というのは、無くならなくて、今日もさっき昼間のニュースでこんなニュースがありました。
医師の男があおり運転 現行犯逮捕
昨日、兵庫県宝塚市の中国道上り線で、時速約100キロで走行していたワゴン車の後方約12mまで接近し走行。
その様子を確認したパトカーに止められた際、警察官を羽交い絞めにした疑いで、京都府長岡京の医師・中野圭明容疑者を現行犯逮捕しました。
中野容疑者は、警察官の暴行に関しては否認しているという事です。
これ、あおり運転という言葉がね、去年の事故から本当に多く聞かれるようになりまして、摘発の件数も増えております。
1万873件です。
これは、摘発が増えただけで、ひょっとしたら八代さん、ずっとあった事かもしれませんね。
そうだと思います、はい。
今でも、あまり減っていない印象ですね。
ですから、今回の件で、ドライブレコーダーをみなさん付けましょうであったりとか、いわゆるあおり運転を受けただけで、それをドライブレコーダー上のものをね、後日提出することによって、例えばそれが暴行罪になったりという事も、世の中の動きとしても出てきた1年ですよね。
その通りですね。
あおり運転という事が、こんなに話題になった年は無かったし、そしてこれをなんとかしようという声が、これだけ高まった年は無かったです。
で、本当に良い策ね、適策というのでしょうか、必要な策をどうやってみんなが考えるかという事が、私たちには求められています。
重罰という事だけで解決が出来るんだったら、一生懸命重罰化すればいいんだけど、それでも起こりますよ、今日の事件のように。
やっぱり、どうしていくかという所の根底の所が今私たちに、考えることを求められていると思います。
これは、検察、弁護側それぞれどうするんですかね、この後。
私はですね、検察はこの求刑よりも5年低いとなった事で、量刑不当という理由で控訴するかというのと、私はまぁ、分かりませんけどやや消極的。
弁護人・被告人は、これは確実に控訴するでしょう。
そういう意味で言うと、この事件は今後、場面を東京高裁に移して、また議論が進んでいく事になると思いますね。
これは、法令適用が不適当だという事で、控訴するわけですか?
そうですね、もちろん事実誤認という事も言うとは思うんですけど、この法令の解釈をどう考える事が最も正しい見方なのかという事が、高裁に問われると思います。
検察としては、危険運転致死傷罪が有罪になったという事で、一時的には目的を達成したという風に考えると思うんですよね。
ですから、量刑が懲役15年とかいう事だと控訴する可能性はありますけど、18年というと、検察が敢えて控訴するという事は無いかもしれない。
これはもう、どちらかが控訴したら高裁に?
そうです。
裁判員裁判は高裁では行われない
高裁に行ったら、裁判員裁判ですか?
違います。
そこは裁判官だけの。
そこが問題なんです。
一審しか無いわけです。
そうすると、せっかく裁判員裁判でやっていながら、高裁、最高裁は、職業裁判官だけと。
裁判員裁判の下した判決が、覆る事だってあるわけだ。
尊重しなさいというのは、最高裁が出しているんですけど、覆る可能性もあるわけです。
それはですから、裁判員裁判の辞退者が最近増えているですけど、これは要するに、苦悩して苦悩して、やっと判決を出したら、行動裁判所でプロの裁判官が、すぐにひっくり返すというんじゃあ、何のためにやったの?という事になるので。
辞退者は最近増えているんじゃない、ずっとなんですよ。
評判が悪いんですよ。
評判が悪い中で、ここでもし裁判員の考えかたを取り入れなかったら、これはもう裁判員をみんなやりたくなくなるだろうと。
いう事もあって、それで裁判員の意向を地裁が受け止めたという面があると思いますよ、私は。