日本海海戦は最初の30分
だから、秋山さんは言っていますね。
最初の30分だけだったと、戦争は。
30分で、後は、翌日までね、それから9回戦争をやっているんだけれども、全部追撃戦であると言っています。
本当の撃ち合いは30分。
だから、この30分のために、日本海軍は10年間をやったんだ、といった事を書いてますけどね。
30分で戦闘の軍艦がポッポッポッポと燃え出すとですね、算を乱すわけです。
そうすると、彼らは、なんとかウラジオに逃げようとする。
それをまぁ東郷さんが追っかけたり、第二艦隊が追っかけたりして、次から次へと沈めて行くんですね。
夜になると水雷艇が出てきます。
これはあの、前の年の8月10日、黄海の海戦で駆逐艦が、殆ど手柄を何も立てなかったんで、全員艦長をクビにしていますね。
全部、新しい人を乗せているんです。
それはあの、それまでの戦いで既に勲章を貰うなんか決まった人はね、危ない事をしないという事がよく分かったんでね、若くてあまり勲章を貰っていないやつを艦長にしてですね、これがまた沈めるんですね、夜。
これは歴史に残る水雷艇と駆逐艦の攻撃ですが。
その時の水雷隊長の一人が、大東亜戦争の終戦の時の鈴木貫太郎です。
そして結局、翌日まで何度もやって、ドミトリー・ドンスコイ号が沈められて終わりました。
それで、ウラジオストックに逃げたのは、小さい船2隻くらいで、小型巡洋戦と運送船かなんかですね。
しかも焼けただれてますから、使い物にならない。
それから他に逃げたのは中立国で武装解除。
それから樺太まで逃げてそこで沈められたのもあります。
事実上、大艦隊が消えたわけです。
日露戦争勝利が世界に与えた衝撃
これはね、凄い影響力があったんですよ、世界中に。
陸上の戦争と言うのはですね、案外弱いとか、低い民度の軍隊もよく戦う事があるんですよ。
南アフリカのボア戦争が、イギリスの精鋭陸軍を4~5年苦しめ、もの凄い損害を与えました。
まぁ、ベトナムだってですね、アメリカ軍にえらい損害を与えていますね。
だから、陸軍というのはね、意外と頑張りがきくんです。
この前の戦争だって、硫黄島なんかはね、空軍も海軍も、何も助ける事が出来なかったけれども、陸軍は頑張っちゃって、死傷から言えばアメリカ軍の方が多かった。
硫黄島でもそうです。
一般民衆への被害は抜いて、軍人同士の被害で考えれば、アメリカ軍の死傷の方が多いんですよ。
陸軍というのはですね、頑張るともの凄い不利なところでも、戦う事が出来るんです。
海軍は文明力で勝敗が決まる
ところが海軍というのはね、完全に文明力なんですよ。
文明の差が絶対なんです、海軍は。
だから、海軍で負けると、本当の敗戦国になるんですね。
分かりやすい例で言いますとですね、イスラム圏というのは、かつては北アフリカからですね、今の中近東全部からトルコ辺りまでズーっとイスラム圏だったわけです。
そして、むしろ西ヨーロッパの方が恐れ気味だった。
ところが、イスラムの海軍が全滅したのがですね、1571年、日本で言えば織田信長と徳川家康の連合軍が浅井朝倉の連合軍と戦った、姉川の戦いの翌年ですね。
レパントと言う、半島の沖でですね、イスラムの海軍と、西ヨーロッパの連合艦隊がですな、戦ってイスラムの艦隊が全滅したんです。
それをもって、イスラムの脅威は去ったんですね。
ヨーロッパから永久に去りました。
やっぱり、海軍というのは決定的なんですね。
だからね、レパントの戦いというのは、普通、学校では教えないんです、小さい話だとして。
僕がたまたま知っておりましたのはですね、大学一年生の時に、英文学の時間にね、英語の先生がイギリスから来たばっかりで、この方は、進化論のチャールズダーウィンが勉強した地質学の本を書いた、チャールズ・ライエルという人のお孫さんでね、ケンブリッジ大学を出た人でしたが、詩人といいましょうかね。
我々に詩ばっかり暗記させたんですよ。
その詩はですね、イギリスならばパブリックスクールの学生がみんな知っているべきはずの詩を選んで、暗記。
説明も何もない、暗記、暗記、暗記。
その時ね、レパントの詩っていうのがあったんですよ。
これは、イギリス人はみんな覚えているらしい詩なんですね。
そんな事は忘れておったんですけどね、学会がバルセロナでありましてね、バルセロナの大聖堂に行った時に、そこで特別な集団みたいな人がミサをやっているんですよ。
「今日、なんかあるんですか?」
っていったらね、
「今日はレパントの勝利の日だ」
っていうんですよ。
だから、日本でいうとね、姉川の戦いの頃の戦いで海上の戦いで、イスラムの海軍が地上から永久に消えた日を祝っているんですよ。
だから、日露戦争で、日本の海軍が本当にバルチック艦隊を全滅させた、これはね、文明的な衝撃がいかに大きかったか、これをもって、20世紀と21世紀が始まると言ってもいいくらいです。