企画は何をやってもかまわない
伊藤プロデューサーは、過去に数多くの企画を考え、いくつかは採用され、多くはボツにされてきたといいます。
伊藤プロデューサーが最初に出したのは、『竹中直人のすんごいのね~』という企画です。
伊藤プロデューサーは、当時、竹中直人さんと全く面識は無かったようだが、勝手に名前をつけていたといいます。
企画の内容は、一般人が出演し、自分がいかに凄いかを自慢し、竹中直人さんが「すんごいのね~」の一言で片付けるというシンプルな内容です。
「人の自慢話って聞いていられないよね。」というのをテレビでバカにしようというのが核だったようですね。
当時、この企画を上司に出した時には、「おまえ、こんなので金取れると思ってんの?」と酷評されたといいます。
伊藤プロデューサーの中には、「線引きやらジャンルやらの区切りなんてどうでもいいよな」といった思いがあるといいます。
当時、テレビ東京では、「ドキュメンタリー人間劇場」という番組が放送されていました。
伊藤プロデューサーは、その番組のある回で、障害者が何を思って生きているのかに焦点を当てた、ドキュメンタリーを放送する回を見たそうです。
暗い番組なだろうと思い見ていた伊藤プロデューサーだったが、予想に反して出演者は非常に明るいものであったといいます。
そして、番組の最後のに障害者の方にした質問と、その答えを聞いた伊藤プロデューサーは衝撃を受けたそうです。
番組の最後に、障害者の方に「人生で一番難しいのはなんですか?」という質問がされました。
その質問に対する答えは、ボソッと一言…「人かな…」というものでした。
それを見た伊藤プロデューサーは、非常に面白いと感じたといいます。
障害者という立場上、今までの人生で、色眼鏡で見られるなど色々な経験をしてきたことでしょう。
ところが、その言い方や、そのキャラクター、吹っ切れた感じがなんとも微笑ましく、ドキュメンタリー番組がまるでバラエティ番組に見えてしまうほどの衝撃を感じるものでした。
ドキュメンタリーなのかバラエティなのか、それは見る人の自由であり、企画そのものに垣根なんて存在するものではありません。
企画は何をやってもよく、物事を勝手にジャンル分けするのは可能性を狭めるだけだということですね。
「くだらない」と言われるためにやり切る
伊藤プロデューサーは「くだらない」と言われる事に重きを置いており、なんだったら、褒め言葉であるとも考えているそうです。
例えば、お宝か何かが出てきそうな雰囲気のある場所を選んで、ただただ30分間スコップで掘るだけのものを放送するといった、くだらないと言われそうな企画を立ててみます。
30分間穴を掘っている様子を、ただただ見る番組といったように一見すると、「この企画はくだらなくなりそうだ」と感じるのであれば、やり切る価値はあるといいます。
そして、やると決めたなら振り切って番組を作り、「くだらない」と評価される事が大切だという事ですね。
企画には必ず逃げ道を作る
伊藤プロデューサーが企画をすると「攻めてるね」「無茶やるね」とよく評価されるといいます。
攻めたり無茶をする企画に真剣に取り組めば取り組むほど、追い込まれて行くケースは多いものです。
そんな時は、伊藤プロデューサーは必ず”逃げ場”を作るようにしているといいます。
今田耕司さんと東野幸治さんが司会を務める「やりすぎコージー」という番組も、伊藤プロデューサーが担当している番組の一つです。
その番組の企画で「モンロー祭り」というものがありました。
番組に呼んだセクシー女優さん達を、「モンローちゃん」と呼び、ちょっとエッチなゲームに励んでもらうというのが番組の趣旨でした。
そのコーナーのタイトル名を「お口 に出してイッちゃって!」とし、進行役である大橋未歩アナウンサー思い切り叫ぶシーンがありました。
伊藤プロデューサーは、普段清楚なイメージで働いているアナウンサーにどうやってエッチな言葉を言わせるかを真剣に考えたといいます。
そこには、「タイトルコールを読んでもらっているだけで、セクシーな事を言わせているわけではない」という逃げ場を用意していたそうです。
追いつめられた時に、「別に命をとられるわけじゃないんだから」と笑って済ませられる余裕を持つことで、面白い企画は生まれるという事ですね。
役割を果たしたら遊んで構わない
番組の企画していると、会社の事情などにより、どうしても伝えなければならない事が出てくるものです。
そのような課題を与えられた場合は、必ず真正面から取り組み、相手の要求に全て回答する必要は無いと伊藤プロデューサーはいいます。
大切なのは、求められている「核」を見極め、その部分を外さないということです。
核を外しさえしなければ、後は自分の得意分野の中で、遊び心を持って行なう方が、伝わることも多いものだという事ですね。
企画の本分を殺さない
テレビの世界では、苦労して通った企画の番組が放送されたとしても、残酷なほど悪い視聴率を叩き出してしまう事があるものです。
自分が面白いと思って出した企画が全否定されてしまうと、企画した人間のショックは計り知れないものがあります。
そのような場合でも、伊藤プロデューサーは、「こうしたい」と最初に決めた「核」は、絶対に曲げてなならないといいます。
本気で勝負し、負けたのであれば、潔くその場を去って次に進むことです。
延命するだけの目的で、自分が思っていないような事を適当に提案するような事をしたら、節操がない人と評価され、その後、成功するとは思えないと、伊藤プロデューサーはいいます。
浮き足立っていたり、軸足がフラフラとしている人は、一瞬はいい結果を出せたとしても、着陸することが出来ずに、次の一歩も踏み出す事が出来ないという事ですね。
誰でも自分の中の1%は天才
「誰でも自分の中の1%は天才だけど、誰でも自分の中の99%は完全に凡人である」というのが伊藤プロデューサーのモットーだといいます。
伊藤プロデューサーの考え方は捨てる事が基本となっています。
企画を立てる際にも、「タイトル」か「一枚の画」を想像し、そこから「核」となるテーマ1つに絞り込んでいくといいます。
あれこれ詰め込み伝えようとしても、メッセージがブレ、結局何が言いたいのか伝わらなくなってしまいます。
オバマ大統領は、「Yes We Can」というフレーズ一つで、大統領選を勝利したと言っても過言ではありませんよね。
それだけ「核」に絞るという事には力があります。
自分の中にある1%の天才の存在を、信じることが大切です。
そして、残りの99%の凡人には目もくれず、天才の1%に全ての時間・才能・努力を集中するわけです。
なぜなら、その天才の1%が自分だけの「核」なわけですからね。
参考図書:伊藤Pのモヤモヤ仕事術