モヤモヤさまぁ~ず2は、2007年からテレビ東京で放送している、さまぁ~ずがブラブラと町歩きをする人気番組です。
個人的にもモヤさまは大好きで、毎週欠かさず見ている数少ない番組の一つです。
モヤさまファンなら分かって頂けるでしょうが、大江麻理子アナウンサーが卒業した回は、それはもうショックでショックで2~3日寝込みそうになったものです。
いったいどのようにして、ヒット番組であるモヤモヤさまぁ~ず2は誕生したのでしょうか?
そこで本日は、モヤモヤさまぁ~ず2のプロデューサーである伊藤隆行さんの企画力についてご紹介させて頂きます。
企画する意味
企画するということは、簡単にいえば、実現したい事を実現する方法を、立案したり、計画したりする事を指して言います。
企画はひとつのタイトルから始まる
伊藤プロデューサーは、企画を考えるときまず最初に思い浮かぶのが、「これを見てみたい」と思う「タイトル」であったり、「一枚の画」だったりするといいます。
まず最初に企画の「核」となる部分を見つける事によって、その先の発想も湧いてくるといいます。
タイトルから発想した企画の場合
バラエティ番組で人気のジャンルに「大食い」があります。
ギャル曽根さんが、高速のインターでただただ食べまくる姿をゲストが見ているというだけで番組が成立している状況からも、「大食いバラエティ」のニーズがあることが分かると思います。
一方で、「小食いバラエティ」という番組は聞いたことがありません。
企画づくりは、ヒット企画を逆さにしてみるなど、軽い発想の転換から、スタートします。
ただし、このままタイトルを逆さにしただけでは、ただの悪ふざけで終わってしまいます。
そこで、ここから「どうやったら成立するのか?」「どんな事をしたら笑えるだろうか?」といった風に、元々の悪ふざけから企画を膨らませていきます。
ありきたりなことをしていても注目は集まらない為、ここでいう「小食いバラエティ」といった自分の中で魅力的だと感じたタイトルを軸にして、必要な企画を肉付けていくというのが企画を作りの基本となります。
例えば、伊藤プロデューサーが過去にプロディースした番組に『人妻温泉』という番組があります。
この番組は「タイトル」から発想した企画だといいます。
当時は、ちょっとした”人妻ブーム”があった時期で、構成作家などの間でも、人妻ネタで盛り上がりを見せていました。
伊藤プロデューサーは、それを聞いていて、気持ち悪いが、何か引っかかると感じたといいます。
後にそれをタイトルに持ってきたのが『人妻温泉』だったという事です。
とはいえ、「人妻」という響きは、バラエティ番組のタイトルとしてはふさわしくありません。
そこで、伊藤プロデューサーは、人妻をバラエティらしくするにはどうすればよいかと考え、テレビ東京の特徴である「旅番組」と組合せる事で、番組企画を生み出しました。
「人妻温泉」の番組内容は、温泉に浸かるのではなく、家風呂に入り、登場する人妻は湯船に浸かることはなく、旦那のいない間にやってきた悩み深い男性達の身の上話を聞きながら、ただただ背中を流すというものでした。
内容的な面白みは少ないですが、「人妻 温泉」というなタイトルが付いていることで、「確かに人妻は出てるし、お風呂に入っているから温泉館もあるな」と、笑って納得して貰えたそうです。
一枚の画から発想した企画の場合
モヤモヤさまぁ~ず2は、伊藤隆行プロデューサーがプロディースした代表作です。
なんとか、さまぁ~ずと仕事がしたかった伊藤プロデューサーは、さまぁ~ずの大竹一樹さんに、
「企画を持って行きたいんですけど、何かやりたいことはありませんか?」
と質問したそうです。
その時、大竹さんからあった返答が、「やりたいこと?歩きて~かな。」だったといいます。
大竹さんの一言で、伊藤プロデューサーの頭には、商店街を歩いているさまぁ~ずの画が浮かんだといいます。
商店街を歩いていたら、イヤなおじさんが現れ、逃げようとする大竹さんや、それを「逃げんじゃねーよ!」ツッコミを入れる三村さんの様子が、はっきりと浮かんだそうです。
今に続く「モヤモヤさまぁ~ず2」の「核」は、この「一枚の画」に秘密が隠されていたという事ですね。
核になるポイントは一つに絞る
伊藤プロデューサーは必ず、企画の一番の核となる部分を1つ決めて、それを必ず守るといいます。
極論すれば、核さえ決まってしまえば、それを守れば企画自体は完成するものです。
「核」は、「画」でも「タイトル」でも「一行のコンセプト」でも「最終的な着地点」でも何でもよく、自分の心に耳を傾け、絶対に曲げられないもの1つに絞る事が大切です。
企画書を書く場合でも、ダラダラと長く書けば良いものではなく、真に伝えたい1行に収まるものでよく、残りは体裁を整えるために、言葉を足したものにすぎません。
軸がいくつもあると主張がブレて響かなくなってしまうため、核を1つに絞り、楽しめるポイントがそこから派生させていくのが基本となります。
自分の持つ核は1つを信じることから、企画は始まるものです。
タイトルに全てを注ぎ込む
番組タイトルは、番組にとっての命であり、全てを表わすと言っていいほど大切なものです。
伊藤プロデューサーも、番組タイトルを最初に考えることもあるほど、番組タイトルにはこだわりを持っているといいます。
「モヤモヤさまぁ~ず2」に関していえば、「モヤモヤさまぁ~ず1」は存在しないにも関わらず、人気があるからシリーズで続いているんだと、途中から見始めた視聴者に感じさせる事を狙って付けられたものです。
「モヤモヤさまぁ~ず2」には、他にも伊藤プロデューサーの熱いメッセージが隠されています。
伊藤プロデューサーは「怒りオヤジ」という番組のプロデューサーをしており、そのパート2の司会をさまぁ~ずにお願いしたいと考えていたといいます。
ところが、他局とのトラブルがあり、さまぁ~ずの司会は実現することが出来なくなってしまいました。
結局、「怒りオヤジ」の司会は、おぎやはぎの矢作さんとカンニングの竹山さんとなり『怒りオヤジ3』としてスタートすることとなりました。
本来なら「怒りオヤジ2」なのだが、さまぁ~ずの司会が実現しなかったため、「2」を欠番としたのです。
そして、その欠番である「2」を、後に企画した「モヤモヤさまぁ~ず」に受け継いだという隠れた意味があったというわけですね。
看板は制作者にとって意味があるべきものであって、想いの全てを詰め込むくらいの気持ちが必要であるというのが、伊藤プロデューサーのこだわりだといいます。